「野球は何人でやるスポーツ?」と聞かれたときに、「9」という数字を思い浮かべる方は多いはず。では、「最低で何人の選手が必要?」という問いはどうでしょうか。
仮に9人が集まらなかった場合に、8人以下でも試合はできそうな気がします。
ただ、ルール上はOKなのでしょうか。サッカーのように誰かが退場したら、そのままの人数で試合が進められるのでしょうか。
また、試合に先発出場する選手だけでなく、途中出場のために控えている選手がいるケースも多いですよね。では、ベンチには何人の選手が入ることができるのでしょうか。
今回は、そんな野球の人数に関する疑問を解消すべく、ルールなどを含めて分かりやすく解説していきます。
野球に必要な人数は?
最低でも9人の選手が必要
野球は、攻撃側と守備側に分かれた2チームが、決められたイニング数の合計得点によって勝敗を競うスポーツです。1チームは9人で構成され、攻撃時には1~9番の打順に基づいて打席に入ります。
また、守備時には以下のいずれかのポジションに位置して、相手チームの攻撃を防いでいきます。
- ピッチャー(投手)
- キャッチャー(捕手)
- ファースト(一塁手)
- セカンド(二塁手)
- サード(三塁手)
- ショート(遊撃手)
- レフト(左翼手)
- センター(中堅手)
- ライト(右翼手)
つまり、野球の試合を行うためには、1チームに最低でも9人の選手がいなければなりません。
では、試合の途中で負傷者が出てしまった場合はどうでしょうか。ベンチに控え選手がいれば、負傷者に代わって出場させることによって、9人のプレーヤーを継続して確保することができます。
しかし、控え選手がいない場合は、9人での試合続行が不可能となり、その時点でフォーフィッテッドゲーム(没収試合)となってしまいます。
「8人でもいいから…」
「1人ぐらい欠けても…」
そう考える人がいるかもしれませんが、野球規則上は9人に満たなくなった時点で試合の続行はできません。
もちろん、はじめから9人に満たない状態では、試合自体を行うことができなくなってしまいます。
そのため、高校野球などでは野球部の人数が9人に満たない場合に、他の部活から助っ人部員を呼んだり、人数の足りない学校同士が連合チームとして出場したりする光景も見られます。
ただ、それでもギリギリの人数で出場している場合が多いため、試合途中の負傷や熱中症などで没収試合になってしまうケースが実際にあります。
9人の選手が必要な理由は?
では、他のスポーツはどうでしょうか。
1チーム11人が基本のサッカーでは、少なくとも7人の選手がいれば試合ができるという規則になっています。
そのため、サッカーの試合を見ていると、レッドカードによって1人の選手が退場となった場合も、残りの10人で試合が進められていることが分かります。
また、2019年のワールドカップでも目にする機会はありましたが、ラグビーについても、シンビンやレッドカードで人数が少なくなった場合には、そのまま試合が続けられます。
野球が9人でなければいけない理由については、様々な見方・考え方があるようです。
発祥国の違いや歴史的な背景はもちろんですが、サッカーやラグビーに比べて人数が少ないこと、1人欠けることで守備が困難になったり、プレーが成立しなくなったりすることなども理由の一つとして挙げられるかもしれません。
ただ、特に大きいのは「攻撃時に9人がそれぞれ打席に立つ」ことではないかと考えられます。
冒頭でもご紹介したように、攻撃時には1~9番の打順に基づいて各選手が打席に入ります。しかし、1人減ると1~8番までとなり、打順の巡りが早くなってしまいます。
巡りが早くなることで、逆に有利になるケースも出てくるかもしれません。そうした特徴を持つ野球では、1試合を通じて同じ人数の条件で行うことがより重要と考えられます。
没収試合の扱いとDH制
9人での試合続行が不可能でフォーフィッテッドゲーム(没収試合)になった場合、記録上は9対0で相手チームの勝ちという扱いになります。9対0の「9」も、野球が「9人」でやるスポーツであるということに由来していると考えられているようです。
1チーム11人で行うサッカーが、「イレブン(=11)」と表現されるように、野球では「ナイン(=9)」という言葉が使われます。プロ野球でシーズン後に選出される「ベストナイン」がその一例です。ちなみに、「ベストナイン」は和製英語でもあります。
なお、1チームに最低でも9人の選手が必要とお伝えしましたが、指名打者(DH)制の場合には、10人のプレーヤーが必要となります。
指名打者(DH)は簡単に説明すると、ピッチャーの代わりに打撃を専門に行う選手。守備はピッチャー、攻撃は指名打者という役割分担になります。
打席に入る選手、守備につく選手はそれぞれ9人であることに変わりありませんが、10人のプレーヤーによって試合が進められます。
野球でベンチ入りできる人数は?
試合に出場する選手は9人(10人)ですが、例えば攻撃中に代打や代走を送ったり、守備の際にピッチャーをはじめとした各ポジションの選手を交代したりと、プレーヤーの入れ替えが行われるケースがあります。
戦略面での交代はもちろんですが、先ほどご紹介したように、負傷などで交代を余儀なくされるパターンもあります。
そのため、野球の試合においては、プレーヤーを含めた一定の人数がベンチ入りできるようになっています。
プロ野球のベンチ入り人数と出場選手登録
プロ野球の場合は、1軍登録されている25人の選手(2020年シーズンは特例で26人)がベンチ入りでき、このなかからスターティングメンバーが選ばれます。
先発メンバー以外の選手は控えとなり、試合の途中で交代し、出場することもあります。
このほか、ベンチには監督やコーチ、マネジャーやトレーナー、スコアラーや通訳、広報担当などが入ります。
また、プロ野球には「出場選手登録」と呼ばれるものがあります。
出場選手登録=1軍登録と考えると分かりやすいと思います。2019年からは最大で29人(2020年シーズンは特例で31人)の登録が可能です。
先ほどお話ししたように、ベンチ入りできるのは、出場選手登録(=1軍登録)された29人の選手のうち25人。
残りの4人は登板予定のない先発ピッチャーあることが一般的で、出場選手登録はしているものの、ベンチ入りしない形となります。
ピッチャーと野手それぞれの登録人数に制限はなく、チームによってその内訳は様々ですが、ピッチャーが10人前後、残りの枠で野手を登録するケースが多いようです。
プロ野球における外国人枠
なお、外国人選手の登録はピッチャーと野手を合わせて最大4人まで(2020年シーズンは特例で5人まで。ただし、ベンチ入りは4人まで。投手:野手を1:4、4:1のいずれかで登録した場合は、その後の配分変更不可)という制限があります。
ピッチャーまたは野手に最低でも1名の登録が必要で、ピッチャーだけ4人、野手だけ4人といった登録はできません。つまり、外国人選手の登録は以下のいずれかの形となります。
<外国人の出場選手登録パターン>
- ピッチャー1人、野手3人
- ピッチャー2人、野手2人
- ピッチャー3人、野手1人
なお、一定の基準を満たしている場合には、外国人選手ではなく日本国籍を持つ選手と同じ扱いになり、上記の外国人枠にカウントしなくてもいい場合があります。
日本の学校へ一定期間以上在学(中・高・短大・専門など:通算3年以上、大学:継続して4年以上在学)していたケース、日本へ5年以上の居住+そのうえで社会人野球チームへの3年以上の在籍していたケースなど、プロ野球選手になる前に一定の条件を満たした外国人は、日本国籍を持つ選手と同じようにドラフト会議での指名を受けて選手契約を締結します。
読売ジャイアンツ(2020年シーズン現在)でプレーする陽岱鋼選手は台湾出身ですが、野球留学で福岡第一高等学校へ在学していました。
そのため、日本国籍を持つ選手と同様、高校卒業後にドラフト会議を経て日本ハムファイターズに入団しています。
また、規定の年数をプレーし、FA(フリーエージェント)の資格を得た場合も、その翌年から外国人選手ではなく、日本国籍を持つ選手と同じ扱いになります。
現DeNAベイスターズのロペス選手は2020年に国内FA権を取得したため、2021年シーズンから外国人枠を外れることになります。
高校野球の登録選手数
高校野球の全国大会では、登録選手数(=ベンチ入りできる人数)が18人以内となっています。
ただし、2020年の交流大会は特例として最大20人の選手がベンチ入りして大会が進められました。
選手のほか、責任教師(野球部長)、監督、記録員もベンチに入ります。
また、地方大会でも、全国大会に合わせる形でベンチ入りできる選手は「18人以内」が基本です。
ただし、「増員可能」という運用になっているため、多くの地方大会では20人がベンチ入りできるような規定となっています。
「18人以内」という規定の都道府県も少数ありますが、ピッチャーの投球数制限が設けられたことなどにより、20人への増員を新たに行う動きも見られています。
さいごに
今回は、野球の人数に関するルールについてご紹介しました。
普段あまり意識することはないかもしれませんが、他のスポーツとの違いを考えてみると、「あれ? よく考えてみれば…」といったルールが存在することに気づかされると思います。
規則上は9人を揃えなければいけませんが、子どもの頃に友達何人かと野球をして遊んだ記憶のある方も多いはず。9人いなくても、野球というスポーツを楽しむことはできます。
もちろん、ルールの下で野球をすることは大切ですし、戦略を立てながら勝ちにこだわることも重要です。ただ、「もっと遠くへ飛ばしたい!」「もっと速い球を投げたい!」といった野球を純粋に楽しむ気持ちを忘れてはいけません。
「一緒に楽しもう!」という気持ちを共有することによって、野球がもっともっと魅力的なスポーツになっていくはずです。