野球のセーブの条件・ルールとは?【ホールドとの違いについても解説】

ルール / 用語

野球において、「守護神」と呼ばれることもある抑えピッチャー。彼らを評価する指標として「セーブ」という記録があります。プロ野球中継やニュースなどで、一度は耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

救援投手(リリーフピッチャー)には、抑えピッチャーのほか、中継ぎやワンポイントリリーフなど、様々な種類があることも特徴。セーブだけではなく、リリーフピッチャーに与えられる記録には、ホールドと呼ばれるものもあります。

今回は、セーブの条件について要点を整理しながら、ホールドとの違いについても分かりやすく解説していきます。

ワンポイントリリーフについては、こちらの記事でご紹介しています。

セーブとは?

セーブとは、勝っているチームのリリーフピッチャーが、最後までリードを守り切ることによって与えられる記録です。セーブのつく場面で登板するピッチャーは、抑えピッチャー(抑え投手)やクローザーと呼ばれるほか、冒頭でご紹介したように「守護神」と表現されることもあります。

プロ野球では、リードしている9回に登板し、1イニングを投げて試合を締めくくるイメージが強いかもしれません。しかし、状況によっては、8回から登板してイニングをまたぐようなケースもあります。

延長戦にもつれこんだ場合などは、10回以降に登板することもあります。
また、セーブが記録されない場面であっても、チームの勝利につなげるため、リードを許さないために、ここぞというシーンで登板することもあります。

セーブの記録は、「一試合につき、一リリーフピッチャーに限って与えられる」という点も特徴です。
また、セーブの権利を得るためにはいくつかの条件があり、それらを満たすことが求められます。野球ルールのなかでも複雑な条件であるため、「セーブ」という言葉や概要を知っていても、こまかな条件については曖昧な方も多いかもしれません。

ここからは、セーブの条件について、くわしくご紹介していきます。

セーブの条件

必須となる条件

ピッチャーがセーブの権利を得るためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。まずは、必須となるセーブの条件について、4つの項目に分けてご紹介していきます。

(1)勝利チームで、最後を投げ切ったピッチャーであること

NPBでの「セーブ」採用時(1970年代)には、その条件を満たせば、中継ぎピッチャーにセーブがつくというケースもありました。しかし、現在では勝利試合の最後を投げ切ったピッチャーであることが条件となっているため、中継ぎピッチャーにセーブが記録されることはありません。

(2)勝利投手の記録を得ていないこと

先発完投でチームを勝利に導いたとしても、そのピッチャーにセーブがつくことはありません。同一ピッチャーに、勝利投手・セーブの記録が与えられることはなく、こうしたケースでは、勝利投手が優先されます。

(3)1/3イニング(1アウト)以上の投球回を記録すること

3アウトチェンジとなる野球では、イニングを3分割し、アウトを1つとるごとに1/3が加えられていきます。1アウトをとる=1/3イニング、2アウトをとる=2/3イニングといった考え方です。
状況によっては「1イニング以上」、「3イニング以上」といった条件が規定されているため注意が必要ですが、いずれにしても1/3イニング(1アウト)以上の投球回を記録することが、セーブの権利を得るための最低条件となります。

(4)リードを守り切った状態で試合を終えること

逆転はもちろん、同点にされてしまった時点で、そのピッチャーはセーブの権利を失うことになります。セーブの権利を得るためには、同点や逆転を許さずに投げ切ることが必要です。

1つ以上満たす必要がある条件

セーブの権利を得るためには、ここまでにご紹介した(1)~(4)に加えて、下記A~Cのいずれかの条件を1つ以上満たす必要があります。

A:3点のリードで登板し、最低1イニング(1イニング以上)を投げる。

抑えピッチャーが1イニング単位で登板するのは、この条件を満たすためでもあります。4点以上のリードで登板した場合は、1イニング投げてもセーブが記録されません。ただし、この後ご紹介するBの条件に当てはまる場合は、この限りではありません。

B:2人のバッター(登板時のバッターと、その次のバッター)に連続でホームランを打たれたら同点・逆転となる状況で、リードを守り切る。

Bの条件は、登板時に塁上にいるランナーの状況によって変わります。具体的な条件は以下の通りです。
なお、「1イニング以上」といった条件はありませんが、(2)でご紹介したように、最低でも1/3イニング以上の投球回を記録しなければなりません。

  • ランナーなし:ソロHR(1点)+ソロHR(1点)=2点差以内
  • ランナーが塁上に1人:2ランHR(2点)+ソロHR(1点)=3点差以内
  • ランナーが塁上に2人:3ランHR(3点)+ソロHR(1点)=4点差以内
  • ランナー満塁:満塁HR(4点)+ソロHR(1点)=5点差以内

C:最低3イニング(3イニング以上)を投げ、リードを守り切る。

Cの場合は、リードを守り切っていれば、点差が何点であっても問題ありません。
Aでご紹介したように、3点以内のリードで登板した場合は最低1イニングの投球でOKですが、4点以上のリードで登板した場合は、最低でも3イニングの投球回を記録する必要があります。
ただし、Bの条件に当てはまる場合はこの限りではありません。例えば4点差であっても、満塁の状況で登板し、1/3イニング以上の投球回を記録すればセーブの条件を満たします。

セーブとホールドの違いは?

ある一定の条件を満たしたリリーフピッチャーに与えられる記録として、「ホールド」と呼ばれるものがあります。

もともとは、抑えピッチャーを含めて、リリーフピッチャー全体を評価するためにセーブという記録が存在していました。しかし、セーブ=抑えピッチャーの指標となっていったため、中継ぎピッチャーを評価するものとして「ホールド」という記録が登場しました。

冒頭で、セーブ=1試合1救援ピッチャーに与えられるものとご紹介しましたが、「ホールド」については、複数のピッチャーが条件を満たした場合、その全員に記録されるという違いがあります。

また、セーブは自チームの勝利が条件となっていますが、「ホールド」については、チームの勝敗に関係なく(例えば、降板後に逆転負けをした場合なども)記録されます。
加えて、「ホールド」はリードしている場面に限らず、同点の場面で登板した場合も、一定の条件を満たせば記録されるという点も特徴です。

セーブとホールドの違い、特にその条件について曖昧という方は多いかもしれません。ここからは、セーブとホールドの条件の違いについて比較しながら、セーブの条件について理解を深めていきます。

ホールドの条件

セーブと同様に、ホールドについても、いくつかの条件を満たす必要があります。まずは、必須となるホールドの条件についてご紹介していきます。

(1)先発ピッチャー、勝利・敗戦ピッチャーのいずれでもないこと。また、セーブが記録されていないこと。

同一ピッチャーに、勝利・敗戦投手、セーブ、ホールドの記録が与えられることはありません。勝利・敗戦投手およびセーブは、ホールドよりも優先。さらに、勝利投手はセーブよりも優先されます。

(2)交代完了ピッチャーではないこと

「交代完了」とは、リリーフとして登板したピッチャーが、試合終了まで投げた時に記録されるものです。つまり、最終回の守備で、そのピッチャーが3アウト目をとった場合、ホールドは記録されません。

(3)1/3イニング以上の投球回を記録すること

ホールドを記録するには、アウトを1つ以上とることが求められます。アウトを1つもとらずに降板した場合、ホールドは記録されません。

(4)自身に記録された失点によって、降板後に同点に追いつかれたり、逆転されたりしていないこと

ホールドの条件を満たすには、単に逆転を許すことなく降板したり、リードを保って降板したりすればいいわけではありません。
例えば、ヒットやフォアボールなどで、自分の出したランナーが残った状態で降板した場合を考えてみてください。後続のピッチャーが打たれ、自分の出したランナーが生還した場合、基本的にはそのランナーを出塁させてしまったピッチャーに失点が記録されます。
そのため、自分が出したランナーが降板後に生還し、同点に追いつかれたり、逆転されたりした場合も、「自身に記録された失点」となり、ホールドの権利は消滅します。

1つ以上満たす必要がある条件

セーブと同様、ホールドの権利を得るためには、上記(1)~(4)に加えて、下記のいずれかの条件を満たす必要があります。セーブとは異なり、ホールドについては同点の場面での登板も条件に含まれていることが特徴です。

(1)リードしている場面で登板した場合

こちらは、セーブの条件でご紹介したA~Cと同じ条件になります。

A:3点のリードで登板し、最低1イニング(1イニング以上)を投げる。

B:2人のバッターに連続でホームランを打たれたら同点・逆転となる状況で、リードを守り切る。

C:最低3イニング(3イニング以上)を投げ、リードを守り切る。

(2)同点の場面で登板した場合

A:失点することなく、同点のまま降板すること。

失点が自身に記録されるorされないに関わらず、同点を保ったまま降板することが求められます。なお、引き分けのまま試合終了となった場合は、交代完了ピッチャーとなるため、ホールドは記録されません。

B:自身の登板中に味方が勝ち越した場合、リードを保って降板すること。

登板中に味方が勝ち越したり、勝ち越されたものの逆転したりした場合などは、リードを保った状態で降板すれば、ホールドの条件を満たすことになります。

セーブの条件に関するまとめ

今回は、ピッチャーのセーブについて、その条件やホールドとの違いを中心にご紹介しました。

プロ野球に比べ、アマチュア野球では、セーブなどの記録を意識する機会はそこまで多くないかもしれません。
ただ、セーブやホールドの条件を知っておくと、ピッチャーの起用法などを含め、見えてくるものがあると思います。

プレーに関するルールはもちろん、記録に関するルールを知ることで、野球がもっと奥深いものになっていくはずです。

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