野球において、試合の流れを大きく変えるダブルプレー。セカンドとショートの連携をはじめ、華麗な守備やコンビネーションが光る場面でもあります。数あるプレーのなかでも、特に内野手の見せ場と言えるかもしれません。
今回は、ダブルプレーに関する基本的な説明はもちろん、ダブルプレーのパターンを解説しながら、ルールや応用的な知識など、知っておきたい情報を分かりやすく解説していきます。
ダブルプレーとは?
ダブルプレーとは、一つの連続したプレーのなかで、守備側が2つのアウトを取る行為を指す言葉です。日本では、「併殺」や「重殺」と呼ばれるほか、2人をアウトにする(=get two)ことから、「ゲッツー」という和製英語が使われる場合もあります。
それぞれ使われるシーンや状況、言葉の位置づけなどは多少異なりますが、まずは「併殺」「重殺」「ゲッツー」が、いずれも「ダブルプレー」と同じ意味を持つ言葉であることを押さえておきましょう。
また、守備側が一度に3つのアウトを取るプレーは、「トリプルプレー」や「三重殺」と呼ばれます。「ゲッツー」に対して「ゲッスリー」と表現されることもありますが、実際に使われるケースはあまり多くありません。
なお、ダブルプレーには、いくつかのパターンがあります。ここからは、大きく4つのパターンを取り上げ、基本的な説明から基本を掘り下げた応用まで、丁寧に解説していきます。
ダブルプレーのパターン1:フォースダブルプレー
フォースダブルプレーとは?
フォースダブルプレーは、ダブルプレーのなかで最も多いパターンです。ここで言う「フォース」とは、塁上にいるランナーが今いる塁を明け渡して、嫌でも次の塁へ走り出さなくてはいけない状態。
例えば、1アウトランナー1塁の場面を思い浮かべてみてください。
バッターが内野ゴロを打った場合、バッターはランナーとなって1塁へ走り出します。
1塁にいるランナーは、バッターランナーがこちらへ向かってきているのに、1塁のベース上にとどまるわけにはいかないですよね。このように塁が詰まっている状態では、塁上にいるランナーが、自動的に押し出される形となります。
フォースの状態にあるとき、守備側は次のいずれかの方法でアウトを取らなければなりません。
- ボール、ボールを持ったグローブをランナーにタッチする
- ボール、ボールを持った手・グローブ、体の一部のいずれかで、ランナーが進むべき塁(押し出された先にある塁)に触れる
フォースプレーは、ランナーが到達する前にベースを踏むだけでもアウトを取れることが特徴です。
フォースダブルプレーは、「2塁ベースを踏んで1塁ランナーをアウト」→「1塁ベースを踏んでバッターランナーをアウト」といったように、ベースを踏んで2つのアウトを取るパターンが多くを占めています。
「463」や「643」のダブルプレーとは?
みなさんは、テレビの中継などで「463のダブルプレー」や「643のダブルプレー」という言葉を耳にしたことはありませんか? フォースダブルプレーのなかで、最も多いのが「463」「643」という数字で表現されるパターンとなります。
野球では、ポジション(守備位置)ごとに守備番号が決められています。まずは、ポジションごとの守備番号についてチェックしていきましょう。
- ピッチャー(投手)→1
- キャッチャー(捕手)→2
- ファースト(一塁手)→3
- セカンド(二塁手)→4
- サード(三塁手)→5
- ショート(遊撃手)→6
- レフト(左翼手)→7
- センター(中堅手)→8
- ライト(右翼手)→9
野球場の電光掲示板などを見ると、出場メンバーの上下左右に1~9までの番号が表示されていることがあります。これは背番号ではなく、先ほど説明した守備位置を表す数字なんです。場内に守備が紹介される時は、番号の若い順に「ピッチャー○○、キャッチャー○○、ファースト○○…」とアナウンスされていきます。
ここでは、ダブルプレーの際に登場する「463」や「643」が、守備番号を意味していることを押さえておきましょう。
<463のダブルプレー>
セカンドがゴロを捕る→2塁へカバーに入ったショートに送球(1つ目のアウト)→ショートがファーストへ送球(2つ目のアウト)
<643のダブルプレー>
ショートがゴロを捕る→2塁へカバーに入ったセカンドに送球(1つ目のアウト)→セカンドがファーストへ送球(2つ目のアウト)
異なる3つの数字は「ボールを捕った順番」(463の場合:セカンド→ショート→ファースト)に並んでいると考えると分かりやすいかもしれません。
「543」や「163」のダブルプレーとは?
「463」や「643」に限らず、例えば「543」「163」など、フォースダブルプレーには様々なバリエーションがあります。
<543のダブルプレー>
サードがゴロを捕る→2塁へカバーに入ったセカンドに送球(1つ目のアウト)→セカンドがファーストへ送球(2つ目のアウト)
<163のダブルプレー>
ピッチャーがゴロを捕る→2塁へカバーに入ったショートに送球(1つ目のアウト)→ショートがファーストへ送球(2つ目のアウト)
「163」は、送りバント失敗のシーンでもよく見られるシーンです。バントがピッチャーの正面に転がってしまったり、打球の勢いが強かったりすると、ダブルプレーが成立しやすくなります。
バントの際にできるだけ打球の勢いを抑えるのは、こうしたダブルプレーのリスク回避にもつながっていると考えることができます。また、小フライになったバントをピッチャーがあえてノーバウンドで捕らず、ダブルプレーを狙いに行くケースも多いです。
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「663」のダブルプレーとは?
ここまでにご紹介したフォースダブルプレーは、「463」といったように異なる3つの守備番号が登場していました。しかし、「663」のように同じ数字が2度登場するケースもあるんです。
<663のダブルプレー>
ショートがゴロを捕る→そのまま自分で2塁ベースを踏む(1つ目のアウト)→2塁ベースを踏んだ後にファーストへ送球(2つ目のアウト)
「663」は、ショートの守備範囲かつ2塁ベース寄りに打球が転がった場合に起こりうるプレーです。2塁ベースに近い場合、自分でベースを踏んだほうがダブルプレーを確実に取れる場合もあります。
「捕る」「投げる」の回数を減らすことで、時間を短縮できたり(距離などによっては、送球したほうが早い場合もあります)、落球や悪送球などのリスクを少なくしたりできるケースもあるんです。
○「捕る」回数
- 「643」の場合:ショート・セカンド・ファーストが「捕る」→3回
- 「663」の場合:ショート・ファーストが「捕る」→2回
○「投げる」回数
- 「643」の場合:ショート・セカンドが「投げる」→2回
- 「663」の場合:ショートが「投げる」→1回
ちなみに「443」というケースは、守備位置や送球のしやすさなどを考えても、あまり見る機会はありません。
「363」のダブルプレーとは?
また、同じ数字が2度登場するケースには「363」といったパターンもあります。
<363のダブルプレー>
ファーストがゴロを捕る→2塁へカバーに入ったショートに送球(1つ目のアウト)→セカンドがファーストへ送球(2つ目のアウト)
「363」のダブルプレーは、ファーストがゴロを捕り、2塁へ送球した後に、1塁ベースに戻ってショートからの送球を受けるようなイメージです。ファーストは、少し動きが多くなりますね。
ただ、こうしたプレーでは、送球後にファーストがベースに戻れないこともあります。その場合、ピッチャーやセカンドがカバーリングに入り、「361」「364」のダブルプレーとなるケースもあります。
ホームゲッツーとは?
フォースダブルプレーのなかには、「ホームゲッツー」と呼ばれるものがあります。このプレーはノーアウトまたは1アウト満塁で発生するもので、「ホームで1つ目のアウトを取る」→「1塁で2つ目のアウトを取る」ようなケースが当てはまります。
1アウト満塁のケースなどでは、「2塁」→「1塁」と転送して2つのアウトを取り、3アウトチェンジにする方法もあります。ただし、一連のプレーのなかでミスが起きるなど、1つしか(あるいは1つも)アウトを取れなかった場合には、3塁ランナーがホームインし得点が入ってしまいますよね。
ホームゲッツーは、まず、ホームに近いランナーをアウトにして得点を阻止する(あわよくば1塁でもアウトを取る)という意味があることを押さえておきましょう。
ダブルプレーのパターン2:リバースフォースダブルプレー
リバースフォースダブルプレーの代表例
リバースフォースダブルプレーと聞くと、とても複雑なプレーを想像する方がいるかもしれません。ただ、そこまで難しいものではなく、試合などでも比較的目にすることがあるプレーと言えます。
先ほどご紹介した「363」のダブルプレーを思い出してみてください。ファーストはゴロを捕った後に2塁へ送球していますが、ゴロを捕った場所が「1塁ベースに近かった場合」はどうでしょうか。
先に1塁ベースを踏んで1つ目のアウトを取る→2塁に送球して2つ目のアウトを取るという方法もありますよね。これが、「リバースフォースダブルプレー」と呼ばれるものの代表例になります。
フォースの状態ではなくなる?
この時に思い出してほしいのが、冒頭でご紹介した「フォース」の話。
もう一度、1アウトランナー1塁の場面を思い浮かべてみてください。バッターが内野ゴロを打った場合、バッターはランナーとなって1塁へ走り出します。そして、1塁にいるランナーは、嫌でも次の塁へ走り出さなくてはいけなくなります。
しかし、先に1塁ベースが踏まれてバッターランナーがアウトになったらどうでしょうか。バッターランナーが先にアウトになる=1塁ランナーは押し出されなくて済むことになるんです。つまり、フォースの状態が解除されるということになります。
リバースフォースダブルプレーの注意点
フォースの状態ではなくなるため、この1塁ランナーをアウトにするためには、塁を離れている間に「ボール」か「ボールを持ったグローブ」をランナーに触れさせる(タッチプレーを行う)必要があります。
タッチプレーであることに知らない・気づかない場合、2塁ベースを踏んだだけでアウトと勘違いしてしまうケースが出てきます。
これを防ぐために、ファーストが1塁ベースを踏んでから2塁へ送球する場合、「タッチ~!」(2塁はタッチプレーだよ)と大きな声を出してショートに知らせてあげることもあるんです。日々の練習で、こうしたプレー・連携に取り組むこともあります。
なお、1塁塁審もすでに1塁でアウトが成立していること、2塁がタッチプレーであることを知らせるために、アウトのジェスチャーを大きくして2塁塁審へ知らせることがあります。
ファーストが1塁ベースを踏んだかどうか分からない時には、塁審のジェスチャーを見て確認するという方法もあります。
ダブルプレーのパターン3:フライやライナーによるダブルプレー
リタッチの義務
フォースダブルプレーやリバースフォースダブルプレーは、内野ゴロの打球に対して起こるものですが、フライやライナーの打球でも、守備側が2つのアウトを取る場合があります。
バッターが打ったライナーやフライを野手が捕った場合、塁上にいるランナーは、自分がいた元の塁(ピッチャーがバッターに対して投げ始めた時に、自分がいた塁)に戻らなければなりません。これを、「リタッチの義務」と言います。
元の塁に戻る前に、ボールを持った野手にタッチされたり、リタッチするべき塁に触れられたりすると、ランナーはアウトになってしまいます。
つまり、ライナーやフライを捕られた時には、素早く元の塁に戻らなければならないということ。タッチされたり送球されたりする前に戻ることができれば、アウトになることはありません。
ダブルプレーとなる具体的なシーン
フライやライナーによるダブルプレーは、塁上にいるランナーがリタッチできずアウトになってしまうケースで起こります。具体的には、以下のようなシーンが想定されます。
(1)ライトへ大きなフライが上がる→捕れないと判断した1塁ランナーがスタートを切る→ライトが追いつき捕球(1つ目のアウト)→ランナーが戻る前に1塁へ送球される(2つ目のアウト)
フライが上がった場合、ランナーはリタッチするために塁にとどまるか、すぐに戻るのが基本です。ただし、(1)のようにランナーが「捕れない!」と判断して飛び出してしまうケースがあります。
また、アウトカウントを勘違いしていたり、盗塁やヒットエンドランのサインが出ていたりした場合にも、ランナーがすでにスタートを切っているため、アウトとなる可能性が高いです。もちろん、ランナーが単純にリタッチすることを忘れてアウトになるケースもあります。
(2)サードが強烈なライナーをキャッチ(1つ目のアウト)→3塁ランナーが飛び出してしまい、タッチされるorベースを踏まれる(2つ目のアウト)
強烈なライナー性の当たりでは、ランナーが反射的に飛び出してしまうことがあります。野手の正面などに飛んでしまうと、ライナーを捕られたとしても、とっさに戻ることができません。こうしたプレーは「ライナーゲッツー」とも呼ばれます。
ダブルプレーのパターン4:三振絡みのダブルプレー
ダブルプレーには、バッターの三振が絡むものもあります。
- バッターが三振(1つ目のアウト)→2塁へ盗塁しようとしたランナーが、キャッチャーの送球によってアウトになる(2つ目のアウト)
- バッターが三振→(1つ目のアウト)→リードの大きいランナーが、戻り切れずにキャッチャーの送球によってアウトになる(2つ目のアウト)
バッターが三振した後に、塁上にいるランナーもアウトになってしまうケースは「三振ゲッツー」と呼ばれます。
ヒットエンドランのサインが出ていたものの、バッターが空振り三振してしまった場合や、2ストライクからスクイズを試みたものの空振りしてしまい、3塁ランナーが挟まれてアウトになるような場合も、三振ゲッツーになりやすいシーンです。
まとめ
今回は、ダブルプレーについて、その種類を中心にご紹介しました。
ダブルプレーになるシチュエーションは、攻撃側にとってはチャンス(あるいはチャンスが広がる場面)、守備側にとってはピンチ(あるいはピンチを広げてしまう場面)であることが多いです。それだけに、試合の流れの左右する大きなプレーとも言えます。
野球には見ごたえのあるプレーがたくさんありますが、「463」や「643」に代表される華麗な守備さばきも、野球の醍醐味の一つ。
一口にダブルプレーと言っても、様々なパターンがありますので、この記事を通じてチェックしてみてくださいね。