野球のルールは奥が深く、時にドラマを生むことがあります。
今回はその中でも勘違いをして勝敗を左右してしまうこともある「インフィールドフライ」について、解説をしていきます!
インフィールドフライが起きる条件とは?
①ノーアウトかワンナウトであること
②ランナーは1・2塁か満塁であること
この2つが発生する絶対条件となります。
ランナーなしやランナーが1人、もしくは1塁3塁や2塁3塁では成立しません。
そしてバッターの打球が③フライであることが条件になります。
ライナーやバントでのフライは対象外となります。
そしてそのフライは④内野手が普通に守備をすれば取れる打球でなければなりません。
この4つの条件が揃ったときにインフィールドフライが成立します。
なぜこんなに細かい条件なのでしょうか?
それはわざとフェアにした場合に守備側がダブルプレーを簡単に取ることができるからです。
例えばノーアウト1塁2塁の状況で打者が内野フライを打ったとします。
ランナーはもちろん動くことができませんので塁の近くで打球の行方を待ちます。
ここで野手が落球したり転倒するなどの理由でボールを取れなかったとします。
そうすると1塁2塁のランナーはボールが落ちたわけですから次の塁に行かなければなりません。(これをフォースと呼びます)
しかし、ボールは内野にあるわけですから守備側は冷静に3塁と2塁にボールを送球すれば、非常に簡単にダブルプレーにできます。
エラーをしたのに守備側が得になるわけです。これはフェアではあせん。
そこでインフィールドフライを審判が宣告します。その時点で打者はアウトとなります。
こうすることにより走者は仮に落球をしたとしても次の塁に行く義務がなくなりますのでボールを落としたとしても安心というわけです。
ちなみに、インフィールドフライは審判が宣告しなければインフィールドフライにはなりません。
審判はインフィールドフライだと思ったらすぐに「インフィールドフライ!」とコールをしてボールが捕球されるか落ちるまで右手を挙げ続ける動作をします。
4人の審判のうち1人でも宣言すれば良いのですが、もし成立条件を完全に満たしていても審判が宣告しなければそのままわざと落としてもダブルプレーなどをしても良いということになっています。
ライナーではインフィールドフライを成立しないと書きましたが、普通に取れるライナーをわざと落とした場合はどうでしょうか?これは故意落球という別のルールが適用されます。
インフィールドフライ・イフ・フェアとは?
インフィールドフライは内野フライを打った時に成立します。
これはボールを取れなかった時に起きるプレーというのはわかりました。でも、この打球がファウルゾーンに落ちた場合などはどうなるのでしょうか?
その場合にはファウルが優先です。そもそもわざとダブルプレーを取れないようにするためのルールです。ダブルプレーはそもそもフェアでなければ成立しません。よってファウルゾーンに落ちたらファウルです。
では、打球がファウルラインぎりぎりのところを飛んでファウルになるのかフェアになるのか微妙な場合はどうするのでしょうか?
その場合には「インフィールドフライ・イフ・フェア」と宣言します。「フェアならインフィールドフライを適用するよ」というわけです。もちろん右手は挙げたままです。
フェアになればインフィールドフライで打者はアウト、ファウルならばそのままファウルです。
インフィールドフライはボールインプレイ
インフィールドフライは宣言した瞬間にアウトになります。
また、フライを取ってしまえば特に試合の状況は動かないことがほとんどなのでボールデッド、つまりタイムがかかった状態同じになると勘違いしやすいのですが、インフィールドフライはボールインプレイ、試合は動いているのです。
ですからフライを取った瞬間にアウトになること覚悟でタッチアップしても構いませんし、フライを落とした時に次の塁を狙っても構いません。
インフィールドフライを勘違いしてサヨナラ負け
このようにインフィールドフライは非常にややこしいルールとなっているためプロ野球でも勘違いによってサヨナラゲームが起こるケースがあります。
最も有名なケースは1991年6月5日の大洋対広島の試合です。
2-2の同点、9回1アウト満塁。さきほどインフィールドフライの条件の①~④で書いたうち、①と②の条件を満たしています。
打者清水はここでほぼ真上に高い打球を打ちました。フライですので③の条件が成立します。
真上に打った打球は捕手達川の守備範囲です。内野にいる選手が容易に取れる打球ですので④が成立しました。
ここで球審の谷は右手を挙げてインフィールドフライ・イフ・フェアを宣告します。打球がファウルになる可能性がかなりあったためです。他の審判も追随して右手を挙げます。
しかし、ここで捕手達川はダブルプレーを狙うためあえて落球をします。
落とした打球をフェアゾーンで捕ったのでここでインフィールドフライが成立し打者清水はアウトとなったのですが、ここでボールがフェアであったため大洋の3人のランナーは進塁義務があると勘違いして走り出します。
ここで達川は3塁ランナーにタッチすればアウトになるのですが、本塁を踏んでアウトにしたと思い込みます。3塁ランナーの山崎も自分はアウトになったと思い込んでベンチに帰ろうとします。
野球選手の本能としてこういったときには惰性で本塁を踏むことがあるようで山崎は本塁を踏みました。
その瞬間、球審の谷は大きな声で「ホームイン!」と叫びます。
アウトになっていない3塁ランナーが本塁を踏んだので得点を認めたのです。
これで3-2となり大洋のサヨナラ勝ちとなりました。
後日達川はインフィールドフライのルールを理解していないことを認めていました。
この冷静なジャッジにより谷審判は1991年度のファインジャッジ賞を受賞しました。
さいごに
プロでも勘違いしやすいインフィールドフライは時として試合を動かす要因になります。
インフィールドフライを理解して冷静に対処するようにしましょう。
また、草野球では審判が理解していないため宣言を忘れるケースもあります。その時ルールをきちんと理解していれば冷静に対応できます。
特に守備側はアウトカウントとベースの状況を良く見るようにしましょう!
野球はルールを学ぶと奥が深くて楽しいですよ!