野球の審判をやるために必要な資格とは?【プロ・アマチュア野球審判員になるための方法を解説】

審判

「野球の審判をやってみたい」「野球の審判ってどうやればなれるの」といった疑問を持っている方も多いかもしれません。
もちろん、練習試合などで審判を頼まれた時には、資格などがなくても試合を裁くことができます。

ただ、プロ野球の世界、アマチュア野球における公式戦などは、試験や講習などを経て、認められた人でなければ試合に出場することはできません。

今回は、野球の審判に必要な資格などについて見ていきたいと思います。

プロ野球審判員に必要な資格は?

プロ野球審判員になるための方法

まずは、プロ野球審判員の資格について見ていきたいと思います。

かつては以下のケースが主流でした。

  1. 引退したプロ野球選手がプロ野球審判員として採用される
  2. アマチュア野球の審判員からプロ野球審判員として採用される
  3. 一般公募によってプロ野球審判員に採用される

現在、プロ野球審判員として活躍されている方のなかにも、元プロ野球選手や元アマチュア審判員、一般公募によって採用された審判員が多く在籍しています。
なかには、1~3のパターンではないものの、リーグ会長へ直談判してプロ野球審判員になったという例もあります。

2014年シーズン以降、プロ野球審判員になるためには、「アンパイア・スクール」の受講が条件となりました。

「アンパイア・スクール」はNPBが2013年に導入したもので、研修審判員の採用を目的として行われています。
ただし、自身のスキルアップのために応募することも可能です。

過去の採用基準について

かつては、プロ野球審判員も「セ・リーグ」と「パ・リーグ」に分かれており、それぞれで採用基準が微妙に異なっていました。

<セ・リーグ>

  • 募集時に年齢30歳未満、男であること。
  • 身長175cm以上、裸眼視力1.0以上であること。
  • 野球経験の有無は問わない。

<パ・リーグ>

  • 募集時に30歳未満、男であること。
  • 身長175cm以上、裸眼視力1.0以上であること。
  • 野球経験者であること。

この採用基準と照らし合わせてみても、プロ野球の審判員は大柄の方が多いことに気づくと思います。
また、眼鏡をかけている人がいないことにも気づくと思います。

身長や視力が求められる理由

身長については、やはり大柄な選手が多いため、それを裁く審判員がある程度の身長がないと「威厳」を保てないという見方もあるようです。

また、大柄な選手が多いプロ野球では、例えばキャッチャーが構えたときの座高が高くなります。
そのため、小柄すぎると球審の視界が遮られやすくなり、投球をはじめとした判定がしづらくなるといった点も考えられるかもしれません。

もちろん小柄だから球審ができないというわけではありませんが、学童や少年野球と社会人野球では、実際にキャッチャーの後ろに立った時の見え方が異なっていると分かると思います。

加えて、選手と同様に審判員も優れた動体視力が求められます。
コンマ1秒、数センチの差が判定を左右する野球、特にプロ野球においては、眼鏡やコンタクトレンズを使用せずに十分な視力を持つ「裸眼」で見ることが重要という考え方もあるのかもしれません。

眼鏡やコンタクトレンズを着用している=正しい判定ができないわけではありませんが、眼鏡がズレたり曇ったり、コンタクトレンズがズレたり外れたりといった可能性もゼロではありません。

眼鏡に関してはレンズに傷が入っていたり、プレイの最中に壊れてしまったりといったことも考えられます。
様々な見方・考え方があると思いますが、先ほどご紹介した採用基準の背景にはそうした点も考慮されているのかもしれません。

現在の採用基準について

なお、現在の「アンパイア・スクール」では、高卒以上(卒業見込みを含む)であれば、性別や身長、体重、視力、年齢などに制限はありません。

「アンパイア・スクール」がプロ野球審判員になるための第一歩であるため、その資格については、以前のような細かな要件がないと考えることもできます。

ただし、このスクールで過去に採用された方を見ると、現段階ではやはり、セ・パそれぞれが掲げていたような採用基準(特に性別や身長、年齢など)に沿うような形で、比較的大柄で若い男性の方が多く採用されている印象でもあります。

アンパイア・スクールの概要

「アンパイア・スクール」は定員が決められており、過去実施分を見ると65名程度となっています。
応募者が多い場合には書類選考が行われ、その選考を通過した人が6泊7日の日程でグラウンドにおける実技、ホテル会議室における座学を受講します。

2020年は新型コロナウイルスの感染リスクを考慮し、アンパイア・スクールの開催は見送られました。
ここでは2019年の実施要項をもとに、アンパイア・スクールの概要をご紹介します。

アンパイア・スクールの内容と応募方法

アンパイア・スクールは毎年12月に行われ、先ほどご紹介したように6泊7日の日程でプログラムが組まれています。

日中(9:00~16:00)は、埼玉県にあるロッテ浦和球場(雨天時は隣接する室内練習場)で2人制メカニクスを中心とした実技が行われます。
また、夕食を挟んで、夜(19:00~21:30)にはホテルの会議室で座講が行われます。
講師はNPBの審判長および審判技術委員のほか、現役のNPB審判員が務めます。

アンパイア・スクールの参加には受講料が必要です。
税込79,000円(※2019年)となっており、ホテルのシングルルーム6泊+19食が含まれています。
また、審判の帽子やTシャツ、マニュアル、インジケーター、ハケが無償で提供されます。

応募にあたっては、指定された期間内にNPB公式サイト内にある「アンパイア・スクール」の専用ページから申し込みが可能です(2019年は6月~8月に募集期間が設けられていました)。

また、スクール修了者のなかで希望者にはアマチュア・ライセンス3級(一般財団法人全日本野球協会)が発行されます。
このライセンスについては、後ほどアマチュア野球審判員の見出しでご紹介します。

研修審判員としての採用

7日間にわたるプログラム終了後、そのなかから研修審判員として数名が採用されます。過去の採用実績は以下の通りです。

2014年度 4名

2015年度 4名

2016年度 3名

2017年度 4名

2018年度 3名

2019年度 4名

研修審判員になると、まずは独立リーグ(四国アイランドリーグplus、BCリーグ)に派遣され、そこで1~2年の経験を積むことになります。
研修審判員は1か月に1度の評価によって技量が見極められます。

秋に行われるフェニックス・リーグが最終試験となり、合格すると「育成審判員」へ昇格することができます。
なお、研修審判員の年俸は102万円(月17万円×6か月契約)となっています。

育成審判員~本契約まで

育成審判員に昇格すると、プロ野球の2軍の試合にも出場できるようになります。
ここでは最長で3年の経験を積み、最終試験に合格するとNPB審判員として本契約することになります。
なお、育成審判員の年俸は385万円です。

ただし、育成審判から本採用されてすぐに1軍の試合に出られるわけではありません。基本的には2軍での経験をさらに積んでいきます。

もちろん1軍の試合に出場することもありますが、多くても月に2~3試合程度。
1軍の審判員として定着するまでの道のりは長く、研修や育成審判員を含めて10年程度かかると言われています。

2021年シーズンは、アンパイア・スクールの1期生である青木昴審判員、水口拓弥審判員が1軍公式戦の初球審を務めたことも話題となりました。
青木審判員は、2019年4月に3塁塁審として1軍公式戦初出場を果たし、2021年の4月に1軍公式戦初球審を務めました。

水口審判員は、1軍公式戦初出場が初球審という珍しいパターンだったことも話題となりました。
一般的には塁審で1軍デビューを果たし、後に球審を務めるというケースがほとんどです。

青木球審のデビュー戦は雨による2度の中断、水口球審のデビュー戦は阪神・藤浪投手の投球が複数回ぶつかるなど、印象的な試合となりました。

アンパイア・スクールの1期生である両氏は、2013年に同スクールを修了しています。
そこからある程度の年月が経っていることからも分かるように、プロ野球審判員として1軍の試合に立つまでの道のりが長く険しいものであることは言うまでもありません。

アマチュア野球審判員に必要な資格は?

2015年から資格制度がスタート

アマチュア野球においては、2015年4月よりアマチュア野球規則委員会による公認審判員の資格制度がスタートしています。

ライセンスを取得すると、全日本野球協会に所属する団体主催の大会へ出場することが可能です。
ただし、大会の規模や区分によって、ライセンスごとに出場できる大会が異なります。
また、年齢制限が設けられている場合もあります。ライセンスの種類については、以下の通りです。

3級審判員>

都道府県大会の審判をすることが可能。
都道府県大会は、都道府県内や市区町村内で行われる大会を指します。

2級審判員>

地区大会(※60歳以下のみ)および都道府県大会の審判をすることが可能。
地区大会は、複数の都道府県にわたるもの(社会人:都市対抗2次予選、大学:明治神宮大会代表決定戦、高校:春・秋地区大会、軟式:国体ブロック予選など)を指します。

1級審判員>

全国大会(※55歳以下のみ)および地区大会(※60歳以下のみ)、都道府県大会の審判をすることが可能。
全国大会は、社会人野球における「都市対抗野球大会」や「日本選手権」、大学における「全日本大学野球選手権」をはじめとした全国規模で行われる大会を指します。

<国際審判員>

国際大会をはじめとした、全ての大会の審判をすることが可能。
国際大会は、世界野球ソフトボール連盟やアジア野球連盟などが開催する大会などを指します。

アマチュア野球審判員になる方法

アマチュア野球の審判員になるためには、まず3級認定講習を受講する必要があります。

この講習は各都道府県にある審判員組織主催で行われます。
開催日程および開催の回数、受講申請における方法、講習会の指導者、参加者の費用負担、受講料などについては各都道府県の主催者が定めるため、居住する地域によって異なります。

3級認定講習に筆記試験はなく、以下の審判における基本的なメニューを受講することで3級審判員として認定されます。

  • Go:Stop:Call(ジェスチャーの基本の反復練習を含む)
  • 球審の構え方及びトラッキング
  • ソフト・トスによる投球判定
  • 1塁フォースプレイ判定のビュー・トレーニング
  • 投手の投球関連動作の確認

都道府県の審判員組織によっては、独自の講習会と上記3級認定講習を併用して行う場合もあります。

また、先ほどご紹介したように、受講申請における方法も主催者によって異なります。
サイト等で募集をかけている場合、所属するチームや連盟経由で参加できる場合、紹介や推薦により受講できる場合など様々なようです。

「審判員になりたい!」という方で申し込み方法が分からない場合は、まず最寄りの野球協会や野球連盟に連絡をとって確認することをおすすめします。
あるいは、実際に球場へ足を運ぶなどして、連盟・協会の方や審判員に声をかけてみてもいいかもしれません。

すぐに3級認定講習会を受講できる場合もあると思いますが、時期や審判員組織によっては、すぐに受講できない場合、ある程度経験を積んでから受講するケースなどもあるようです。

なお、プロ野球審判員の項目でご紹介しましたが、「アンパイア・スクール」を受講すると、修了者で希望する方に3級のライセンスが発行されます。

3級審判員となった後の流れ

3級審判員の資格取得後は、経験を積みながら2級、1級…とステップアップを目指していきます。

2級審判員については3級審判員に認定された年度を含む3ヵ年度、1級審判員については2級審判員に認定された年度を含む 3ヵ年度の経過が求められるため、ある程度の時間をかけながらステップアップしていくようなイメージです。

国際審判員の資格取得にあたっては、1級を取得することで認定の要件を満たし、1級取得からの時間経過については要件として定められていません。

ちなみに、国内外のプロ野球組織等で審判員として活動していた人については、所定の手続きを経ることで1級審判員の資格を取得することができます。

所定の認定要件を満たし、筆記と実技のテストで所定の成績を収めることで昇級することができます。

ここからは、各級の詳細について見ていきましょう。
なお、記事執筆時点での情報となるため、内容が変更となる場合があります。

1級・2級の筆記試験概要

全国280か所ある試験会場で筆記試験(受験料:5,100円)が実施されます。
不合格の場合は期間内に何度でも受験することが可能です(2回目以降は受験料:3,600円)。

問題は公認野球規則、アマチュア野球内規、野球審判員マニュアルから出題されます。
なお、1級と2級の筆記テストは同じ問題が使用され、それぞれの合格点が異なっています。

【問題数】25問(○×方式)

【試験時間】30分

【満点】50点

【合格点】1級審判員:40点以上(正答率8割)、2級審判員:35点以上(正答率7割)

1級・2級の実技評価概要

<プレートワーク>

プレートワークでは、球審の構え方、投球判定におけるトラッキング、コールのタイミングや声の大きさ、ストライクの形、ジャッジの正確性を見ます。

【項目数】6項目

【点数】a(優秀):5点、b(普通):3点、c(不足):1点

【満点】30点

【合格点】1級審判員:21点以上(得点率7割)、2級審判員:18点以上(得点率6割)

<フィールドワーク>

フィールドワークでは、フォースプレイや2塁盗塁、打球判定(球審)・ランダウン(3塁塁審)、飛球判定(1・3塁塁審)、2人制メカニクス、本塁タッグプレイ、キャンプゲームなどの項目における評価を行います。

【項目数】7項目

【点数】a(優秀):5点、b(普通):3点、c(不足):1点

【満点】35点

【合格点】1級審判員:25点以上(得点率7割)、2級審判員:21点以上(得点率6割)

なお、国際審判員についても筆記テストと実技評価がありますが、以下のような条件があり、1級や2級の試験とは異なります。

  • 各都道府県の審判員組織、各団体の推薦が必要であること
  • 大会が長期であるため2週間~10日程度の長期休暇が取得できること
  • 可能な限り日常会話程度以上の英語の能力を有していること(必須ではない)

国際審判員認定のためのコンピュータ試験に合格したのち、50名を定員(※実技評価できる人数に限りがあるため)として1泊2日の日程で実技評価が行われます。

国際審判員の認定講習は毎年開催されているわけではなく、現状では2~3年おきに開催されていくような形となっているようです。

【テスト問題】アマチュア野球審判員の筆記テストにチャレンジ!

最後に、筆記テストの問題にチャレンジしてみましょう。

問題は、一般財団法人全日本野球協会アマチュア野球規則委員会「ライセンス制度の1級・2級の認定講習実施方法(概要)」に記載されている『筆記テスト問題の例』から引用しています。(引用元PDF

1級・2級筆記テストの問題

次の問題文を読んで、〇または×で答えてみてください。

【問題1】

投手がボールを受け取った後マウンドの土の部分を離れた場合、打者はバッタースボックスを離れてもよい。
(一般財団法人全日本野球協会アマチュア野球規則委員会「ライセンス制度の1級・2級の認定講習実施方法(概要)」より引用)

【問題2】

走者一塁、打者は遊撃手へのゴロを打った。遊撃手は二塁へトスしようとしたが止めて一塁に送球し、それが悪送球となってダッグアウトに入った。一塁走者と打者走者には、送球が遊撃手の手を離れたときの占有塁から2個の塁が与えられる。
(一般財団法人全日本野球協会アマチュア野球規則委員会「ライセンス制度の1級・2級の認定講習実施方法(概要)」より引用)

【問題3】

インフィールドフライと宣告された飛球を、内野手が故意落球した。インフィールドフライの規則が適用される。
(一般財団法人全日本野球協会アマチュア野球規則委員会「ライセンス制度の1級・2級の認定講習実施方法(概要)」より引用)

普段、野球の試合では意識しない部分、あまり起こらないケースが出題されているようなイメージもあるかもしれません。あまり考えすぎず、気軽に挑戦してみてください。

それでは、解答と解説を以下に記載していきます。

1級・2級筆記テストの解答と解説

【問題1】〇

野球規則6.02 d「バッタースボックスルール」(A)のなかに記載があります。
バッターは打撃姿勢をとった後、少なくとも一方の足をバッタースボックス内に置いておかなければならないという規定があります。

ただし、その規定が除外される8つのケースがあり、その1つとして「ピッチャーがボールを受け取った後に、マウンドの部分を離れた場合」といった内容が書かれています。

そのため、問題1のようなシチュエーションでは、バッターボックスから離れても差し支えありません。
ただし、ホームプレートを囲む土の部分(ダートサークル)を出てはいけません。

よって、答えは〇となります。

【問題2】×

野球規則5.06b「進塁」(4)(G)および野球審判員マニュアル第3版65ページ(3)に記載があります。
悪送球で走者に2個の進塁が与えられる場合、以下の2パターンで「どの時点から2個の進塁なのか」という点が変わります。

<パターン1>
打球処理直後の内野手の“最初のプレイ”に基づく悪送球であった場合→「投手の投球当時」の各走者の位置を基準に2個の進塁が与えられる。

<パターン2>
その他の場合→悪送球が「野手の手を離れたとき」の各走者の位置を基準に2個の進塁が与えられる。

今回の「遊撃手は二塁へトスしようとしたが止めて一塁に送球した」という例は、トスしようとして止めた=トスするマネをしたと解釈されます。
マネをするだけでは、最初のプレイにはカウントされません。

つまり、一塁への悪送球が最初のプレイとなるため、「野手の手を離れたとき」ではなく、「投手の投球当時」の各走者の位置を基準に、2個の進塁が与えられることになります。

よって、答えは×となります。

【問題3】〇

野球規則「本規則における用語の定義」40[原注]に記載があります。
インフィールドフライが宣告された飛球を内野手が故意に落球したとしても、インフィールドフライが優先されます。

故意落球の場合はボールデッドとなり打者アウト、走者は投球当時に占有していた塁に戻され、進塁することはできません。

一方で、インフィールドフライは宣告された時点で打者アウトになりますが、ボールインプレイとなりプレイが継続します。

つまり、アウトになるリスクはありますが、走者は進塁しても問題ありません。
もちろん、打者がアウトになっていてフォースの状態が解消されているため、そのまま自分の占有している塁にとどまっていても問題ありませんし、塁を明け渡さなければならないこともありません。

よって、答えは〇となります

さいごに

今回は野球の審判員になるための方法や資格について、「プロ野球審判員」「アマチュア野球審判員」の2つに分けてご紹介しました。

アマチュア野球に目を向けても、審判員の人材確保難や高齢化が年々深刻になっています。
審判員になる=ハードルが高そうなイメージがあるかもしれませんが、第一歩を踏み出せば、その楽しさや魅力に取りつかれていくはず。

審判員として野球を見つめることで、選手や指導者にとって役立つことも多く、世界がより広がっていくと思います。

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