野球の審判を徹底解剖!概要からルールとの関連まで

ルール / 用語

野球の試合を進行する上で、欠かすことのできない「審判員」の存在。アウトやセーフなどの判定をする人というイメージが強いかもしれませんが、もっともっと奥深い世界があるんです。
今回は、審判に関する概要、審判に関わるルールなどを、分かりやすく解説しながら、審判員の世界をご紹介していきます。

野球の審判とは?

審判員って何をする人?

「審判員って何をする人?」と聞かれたら、みなさんは何と答えるでしょうか。ストライクやボール、アウトやセーフ、フェアやファールなどの判定をする人というイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし、プレーの判定にとどまらず、試合進行に関する全ての権限・義務を持ち、試合をマネジメントするという役割を担っています。

審判員は試合で起こるプレーの判定をするだけでなく、ルールを守り、フェアプレーの精神で、選手たちが気持ちよくプレーできるようにゲームをコントロールしなければなりません。
スピーディーに試合を進行するために、例えばピッチャーの「〇秒ルール」やバッターズボックスのルールを厳格に適用することが求められます。
選手たちにスピードアップを促すために、声がけやジェスチャーを用いることもあります。

また、試合中に起こるトラブルや抗議、突発的な事故、天候の変化などにも適切に対応しなければなりません。

判定の場面で注目されることが多いですが、それ以外のシーンで審判員に注目してみると、新たな発見があるかもしれません。

野球審判員の給料は?

プロ野球の審判員は、個人事業主で年俸制。選手と同様に1年ごとの契約となっており、契約更新するかどうかは、シーズン中のジャッジによって決まります。

どんなに審判歴を重ねていたとしても、ミスやトラブルが多くなってしまうと、査定によっては「更新なし」というケースもあるんです。
年俸は、1軍と2軍で異なりますが、1軍では700万円台、2軍では300万円台を最低ラインとして、試合数や経験などに応じて上積みされると言われています。
また、試合に出場すると「出場手当」がもらえるため、年俸+出場手当で1000万円を超える審判員もいるようです。

アマチュア野球は基本的にボランティアであるため、給料は発生しません。
仕事をしながら、休日を中心に審判員としてグラウンドに立つケースがほとんどで、春や夏の高校野球(甲子園)の審判委員も、普段は公務員や会社員として働いています。

春や夏の高校野球審判委員は、甲子園のある兵庫県をはじめとした関西の野球連盟に所属する審判員や東京六大学野球連盟の審判員を中心に構成されています。
また、各都道府県から派遣される審判委員も加わります。派遣審判員は各塁の塁審を担当し、球審は担当しません。
最低でも各塁の塁審として3試合(2塁→3塁→1塁というケースが多いです)を担当し、多い場合には+1試合ほど塁審を務めることもあります。

野球審判員の定年は?

プロ野球審判員の定年は55歳でしたが、現在は58歳まで引き上げられています。
さらに、能力や体力などを維持できると判断された場合は原則として60歳まで、最大で65歳まで審判員を続けることができます。
2020年シーズンにおいて定年が延長されるのは、佐藤純一審判員と、杉永政信審判員の2名。
2020年に60歳となる佐藤審判員は、2019年シーズンに続いての定年延長となります。

なお、ボランティアであるアマチュア野球において定年制度はありません。
ただし、ライセンスや大会によっては年齢制限が設けられています。レベルの高い試合においては、打球やプレーのスピードも上がります。
それに対応できる機敏さが審判員に求められることや、世代交代をより活発にするという観点から、全国大会や地区大会に年齢の制限が設けられているんです。

具体的には、国際大会へ出場できる国際審判員のライセンスには、50歳以下の年齢制限が設けられています。また、全国大会は、国際審判員および55歳以下の1級審判員、地区大会は、国際審判員および60歳以下の1・2級審判員という制限があります。
なお、都道府県大会については、国際審判員および1~3級審判員が出場でき、年齢制限は設けられていません。審判員の人材確保難や高齢化を背景として、70代以上の審判員が試合を裁いているケースもあります。

審判員の構成

一口に審判員と言っても、様々な立場・役割があります。まずは、審判員の構成についてご紹介していきます。

球審

球審は、基本的にキャッチャーの後方に配置される審判員です。
ピッチャーの投球に対する「ストライク」「ボール」の判定はもちろん、一・三塁ベース前やファール地域における「フェア」「ファール」、「ヒット・バイ・ピッチ(デッドボール)」や「インターフェア(打撃妨害)」、得点したかどうかを明確にする「スコア」「ノースコア」、本塁周辺および本塁・一塁間における「守備妨害」や「走塁妨害」など、様々なプレーに対する判定を行います。

また、選手交代を含む出場選手の管理、ピッチャーの投球練習数や攻撃側・守備側のタイムの回数管理、フォーフィッテッドゲーム(没収試合)の裁定など、試合の進行においても様々な役割を担います。

1試合で何百球という投球を判定するなど、塁審とは異なる集中力や体力も求められます。最もプレッシャーを感じやすいのが球審と言えるかもしれません。

球審はキャッチャーと同様に、投球やファールボールなどが当たるケースも多いため、マスクやプロテクター、レガース、審判靴(先端が安全靴のようになっているもの)など、様々な防具をつけて試合に臨みます。
全てを装着すると6~7kgあるいはそれ以上になり、汗をかくことによって1試合で3~4kgも体重が落ちることも。

なお、球審を「主審」と表現することがありますが、野球において「主審」と呼ばれる審判員は存在しません。これについては、後ほど「責任審判」の項目でもご紹介していきます。
球審はスコアボードで「PL」と表記されることが多いですが、これは「Plate Umpire」(プレートアンパイア)を略したものです。

塁審

塁審は、基本的に1塁~3塁の各塁付近に配置される審判員です。
各塁で起こるプレーの判定はもちろん、打球に対するフェア・ファールおよびホームラン、内野や外野のライナーやフライに対する「キャッチ」「ノーキャッチ」、ピッチャーに対する「ボーク」、ハーフスイングのリクエストに対する「スイング」「ノースイング」など、様々な判定を行います。

また、判定に限らず、試合の進行において様々な役割を担う点は球審と同様です。

塁審の立ち位置は、アウトカウントやランナーの位置、打者によって変わります。
なかでも、2塁塁審の立ち位置は特徴的と言えるかもしれません。ランナーなしのケースでは、外野に位置していますが、ランナーが1塁や2塁にいる場合には内野内に位置します。

内野内に位置した場合には、2塁上での盗塁やフォースプレーの判定を行うほか、1塁や3塁のカバーリングに入り、判定を行う場合もあります。
各審判員のカバーリングについては、後ほどフォーメーションの項目でご紹介します。

外審(外野審判)

外審は外野審判とも呼ばれ、かつては線審とも呼ばれていました。
プロ野球における1軍の試合では、先ほどご紹介した球審と3人の塁審による「4人制」を基本としていますが、日本シリーズやクライマックスシリーズ、オールスターゲームなどでは「6人制」によって試合が進められています。

また、春・夏の高校野球など、アマチュア野球においては、ナイターゲーム(点灯試合)になった場合に外野審判が配置されるケースが多いです。
試合開始時は4人制で進められ、中盤~後半に照明が点灯されたタイミングで6人制になることもあります。この時にレフト側およびライト側に配置されるのが、外審(外野審判)です。

かつては、ライン際におけるフェア・ファール・ホームランなどの判定を中心に行っていましたが、現在ではライン際に限らず、外野のライナー・フライに対する「キャッチ」「ノーキャッチ」など、外野の打球において広く判定を行います。塁上での「アウト」「セーフ」などの判定は行いません。

4人制のケースで1塁・3塁の塁審が担っていた役割の一部を、レフト・ライトの外審が行うというイメージが分かりやすいと思います。

責任審判

冒頭でもご紹介したように、「球審」=「主審」とはなりません。
「塁審」=「副審」ではないように、野球においては、原則としてそれぞれの審判員が同等の権限を持っています。

審判員の判定に対して、他の審判員が「こうしたほうがいいんじゃないか」「変えたほうがいいんじゃないか」「違うんじゃないか」といったような意見をすることは許されません。
ただし、判定をした審判員が相談し、他の審判員に意見を求めることはできます。ただし、判定に対する最終判断を当該審判員が行うという点については変わりません。

主審とは異なりますが、「責任審判」が主審と似たような立場と考えると分かりやすいかもしれません。
プロ野球における1軍の試合では、試合を担当する4人の審判員のうち、クルーチーフと呼ばれるベテランの審判が責任審判となるケースも多いです。

ただし、クルーチーフがいない場合は、それ以外の審判員が責任審判となります。クルーチーフが複数人いる場合は、そのうちの1人が責任審判となります。
また、6人制の場合は、球審または塁審のいずれかが責任審判になる場合も多いですが、そのなかにクルーチーフがおらず、クルーチーフの外審が責任審判を務めたケースもあります。

上記のケースでは、3塁塁審を務めるクルーチーフ(現シニアクルーチーフ)の森健次郎審判員が責任審判となっています。
アマチュア野球においては、「球審」=「責任審判」ということも多いかもしれませんが、責任審判は必ずしも球審である必要はありません。経験や役職などを考慮し、担当審判員のうちの1人がその職務を担う形になります。

控え審判

試合には出場しませんが、担当審判員と同じ服を着用した控え審判がバックネット裏に待機しています。
提訴試合か認められていないアマチュア野球においては、ルールの適用を誤った場合、監督などから抗議を受けた場合に、それらを迅速に解決すべく控え審判が置かれます。

また、常にアウトカウントやボールカウントなどを確認し、カウントを間違えている場合などに訂正させる役割もあります。担当審判員が裁定に困るようなケースでは、控え審判員と協議することもあります。

控え審判として試合を終えることがほとんどですが、出場審判員のケガや病気など、試合中のアクシデントによって続行が不可能になった場合は、その審判員に代わって出場することもあります。

照明点灯試合において、外野審判として出場することもあります。
同じ服を着用している理由は、こうした事態・状況にすぐ対応できるようにするためでもあります。
球審が途中交代せざるを得なくなった場合、控え審判員がそのまま球審に入るケースもあります。

ただし、プロ野球においては、すでに出場している塁審のいずれかが球審となり、控え審判員は塁審として出場することが多いです。
なお、2軍には控え審判がいないため、4人制→3人制、3人制→2人制というように、審判員を減らして試合を再開させます。

審判員のコール

ピッチャーの投球がバッターの体に当たった時、私たちは「デッドボール」なんて言いますよね。
しかし、球審は「ヒット・バイ・ピッチ」とコールします。
このように、私たちが普段使っている言葉と審判員のコールは必ずしも同じとは限りません。
例えば、試合を始める時や、ボールデッドの状態から再開する時に球審がコールする「プレイ」も、「プレイボール」とは言いません。

審判員のコールは国際基準に則ったものとなっており、「アウト」に関しては、「He’s out.」、フライによるアウトの場合は「That’s a catch.(Catch out.)」とコールします。
ハーフスイングのリクエストがあった場合には、球審が「Did he go?(=振った?)」と塁審に聞き、塁審は「Yes,he did. (Yes, he went.)」または 「No, he didn’t go.」と答えるなど、実は色んな英語を用いているんです。

コールではありませんが、私たちが「タッチ(touch)」と表現するものを、審判員は「タッグ(tag)」と言います。「タッチプレー」→「タッグプレー」、「タッチアップ」→「タッグアップ」などと表現されますが、内容については同じです。

栄村審判による審判講座

審判員の配置とフォーメーション

審判員の配置

ここまでにご紹介したように、審判員は、キャッチャーの後方に配置される「球審」、1~3塁の各塁に配置される「塁審」の4人によって構成される「4人制」が一般的です。
そこにレフト・ライトに配置される外審(外野審判)を含め、「6人制」によって試合が進められる場合もあります。

ただし、1人~3人の審判員によって試合が進められるケースもあります。
プロ野球の2軍の試合では、「3人制」が取られることも多く、アマチュア野球でもそうした構成を目にする機会は多いかもしれません。
審判員不足を背景に3人制が取られる場合もありますが、3人制で試合を進めることにはメリットもあるんです。この点について、審判員のフォーメーションと絡めながら説明していきます。

審判員のフォーメーション・メカニクス

審判員は、各塁における「アウト」「セーフ」やライン際の「フェア」「ファール」だけを判定しているわけではありません。

例えば、以下のようなシーンをイメージしてみてください。

  1. ポール際の打球がフェア/ホームランなのか、ファールなのか
  2. ノーバウンドでキャッチしたのか、ワンバウンドでキャッチしたのか
  3. 単なる落球なのか、捕球の一連の動作が完了した後の落球なのか

野球では、こうした微妙な場面がありますよね。
地面すれすれの打球やフェンス際の打球などは、観客が見ていても「えっ、捕った?」なんて分からないことがあります。
こうした打球は「トラブルボール」と呼ばれ、審判員はできるだけ近づいて判定しなければならないとされています。
2塁ベース後方のフライで、セカンド・ショート・センターなどの野手が集まるような打球もトラブルボールの一例です。

トラブルボールの判定を含め、外野のライナーやフライについては塁審が打球を追いかけて判定を行います。
トラブルボールではなくても、誰もが捕るだろうと思う打球でも、基本的には打球を追いかけます。

例えば、ランナーなしの状況でセンターフライが上がったとします。
2塁塁審はセンターへの打球を追いかけるため、2塁ベース付近から離れることになります。
それがヒットとなり、打者走者が2塁へ向かう→2塁でクロスプレーが発生した場合、2塁の判定は誰が行うのでしょうか?

2塁塁審が打球の行方を追った後に、2塁ベースへ戻るのは難しかったり、間に合わなかったりというケースも考えられます。
そうした事態に備えて、審判員にはカバーリングを目的としたフォーメーションが存在しているんです。

ランナーなしで2塁塁審が打球を追いかけた場合、3塁塁審が2塁のカバーへ向かいます。
球審は3塁のカバーへ向かい、1塁はホームのカバーへ向かうというように時計回りで動くことから「クロックワイズ・メカニクス」と呼ばれます。

カバーした塁でプレーが発生した場合は、カバーした審判員が判定を行います。
そのため、3塁でのプレーを球審が判定したり、ホームでのプレーを1塁塁審が判定したりすることもあるんです。
なお、ランナーの触塁やタッグアップについても、カバーリングした審判員が確認し、アピール(ベースを踏んでいない、タッチアップが早いなど)があった場合は、カバーリングした審判員が判定を行います。

こうしたフォーメーションは、ランナーの状況やアウトカウントによって細かく変わってくる点も特徴です。
時計回りではなく、反時計回りに動く場合もあります。球審がホームに留まる(ステイ)こともあります。

審判員の間では「次はこう動きますよ」「了解(両手をグーにして重ねる)」といったようなシグナルを事前に出し合って、フォーメーションの確認・共有を行っているんです。
「インフィールドフライ(胸に手を当てる)」や「タイムプレイ(腕時計をさわる、たたくようなジェスチャー)」などのシグナルもあるため、そうした部分に注目してみるのも面白いかもしれません。

試合中に審判員のフォーメーションに注目することで、流れるようなカバーリングを楽しむことができますし、審判員がいかに動いているかが分かると思います。
2塁塁審は、1試合で10kmほどの距離を走るとも言われています。

よそ見はなぜ起きた?

2019年4月21日にナゴヤドームで行われた、プロ野球中日・ヤクルト戦。この試合で話題になったのが、2塁塁審のよそ見でした。

1アウト2塁でセカンド後方へフライが上がる

セカンドが走りながらキャッチ

2塁ランナーが飛び出しており、セカンドが2塁へ送球

2塁塁審が「セーフ」の判定

その後、リプレー検証が行われ「アウト」に覆される形となりました。
この時の映像では、2塁塁審は一塁側を向いているように見えます。では、一塁側のどこを見ていたのでしょうか。
結論としては、「1塁・3塁の塁審を見ていた」という可能性が高いのではと推測されます。
映像で2塁塁審は1塁・3塁塁審の動きを見るために、左・右とチェックしているように見えるんですよね。

客席から見た 誤審! 今岡諒平二塁審判のよそ見の判定(セーフ)から荒れるナゴヤドーム 与田監督怒る! 中日ファンヤジる! リプレイ検証で判定覆る 2019年4月21日(日) 中日 – ヤクルト 6回戦

外野のライナーやフライについては塁審が打球を追いかけて判定するとお話ししましたが、こうした内野後方のフライについてもトラブルボールと似たようなケースであるため、塁審が打球を追いかけることもあるんです。

そのため、2塁塁審は1塁・3塁の塁審が追いかけたかどうか、それによってカバーリングが必要かどうかを確認しようとしていたと思われます。
しかし、それに気を取られてしまい、2塁でのプレーの確認が遅れたという流れであったのではないかと推測されます。

この時は1アウト2塁で、2塁塁審は内野内に位置していました。
内野内に位置している場合、2塁塁審は外野の打球に対する責任を負いません。
その代わり、外野を2分割する形で、1塁・3塁塁審がそれぞれの責任範囲において打球を追いかけることになっています。
得点圏にランナーがいる場合、球審はホームにステイします。2塁塁審はカバーリングに関してあらゆるケースを想定しなければなりません。

【1】一塁塁審が追いかけた場合

  • フライを捕った場合→2塁でのプレーに備える
  • フライを落とした場合→打者走者の1塁触塁を確認しつつ、2塁でのプレーに備える

【2】三塁塁審が追いかけた場合

  • フライを捕った場合→2塁でのプレーに備える
  • フライを落とした場合→2塁走者の3塁触塁を確認しつつ、3塁でのプレーに備える

この場面ではあまり考えられないと思いますが、2塁ランナーがタッグアップする可能性もあります。
このように、2塁塁審はあらゆるケースを想定して動かなければなりません。
1塁・3塁塁審の動きが、2塁塁審の動き決定づける要素の一つになると考えることができます。

1塁・3塁の塁審が追いかける可能性のある打球であったものの、あまり高いフライではなかったため、確認をしているうちに次のプレーへの備えが不十分になってしまったとも言えるかもしれません。

3人制と4人制のフォーメーション

4人制→6人制となった場合のフォーメーションは、1塁・3塁の塁審が追いかけていた外野の飛球を、レフト・ライトの外審が追いかけるような形に変わります。
塁審が外に出るケースが少なくなるため、フォーメーションに基づいた動きも少なくなると言えるかもしれません。

では、3人制の場合はどうでしょうか。3人制は球審と塁審2名によって試合が進められるため、カバーリングやカバーリングに伴う動きも多くなります。
確認する場所も多く、視野を広く持つことや、正しい位置取りをすることがより求められるのが3人制の特徴とも言えるかもしれません。

3人制が身につくと、位置取りへの意識が高まり、先を読んで準備する力も身につきます。
視野を広く持てるようになるため、臨機応変に動けるようにもなります。4人制が3人制をもとに成り立っているという側面もあるため、3人制を身につけると、4人制になった場合にも生かされることがたくさんあります。
2人制→3人制も同様です。審判員不足によって4人未満で試合が進められるケースもありますが、2人制や3人制の実戦経験を積むことにも大きな意味があります。

NPBの眞鍋勝已審判員は、フォーメーション自体はあまり難しいものではなく、フォーメーションにあてはめる感覚を養うのに、どれぐらいかかるかってことがポイントだとお話しされていました。
審判員にとって、フォーメーションは「息をするようなもの」だとお話しされていましたが、その動きは本当に計算されていて奥が深いです。
フォーメーションを理解すると、プレーに対する判定だけではなく、塁に触れたかどうか(触塁)の確認がいかに大切かといったことなども、しっかりと理解することができます。

野球の審判に関わるルール

審判にボールが当たったら?

「審判は石ころと同じ」なんて聞いたことはありませんか?これは、言い換えると、審判に打球が当たってもインプレー(プレーが継続される)という意味になります。しかし、いつでも石ころというわけではないんです。

この説明に当てはまるのが、2015年6月2日に行われたソフトバンク・DeNA戦での一コマ。
2アウト満塁の場面で、柳田選手の打球が内野内に位置していた2塁塁審に当たってしまいます。この時点でボールデッドとなり、柳田選手は1塁へ。満塁だったため、塁上にいるランナーは押し出される形となり1点が入ります。
しかし、ボールデッドでなければ2点が入っていた可能性もあったため、ソフトバンク側が猛抗議し、試合が中断しました。

野球規則では、打球がピッチャーを通過し、内野内に位置していた審判に触れた場合はボールデッドになると規定されています。
フェアボールが投手を“含む”内野手に触れていない、あるいは投手を“除く”内野手を通過していない状態で審判員に当たると、審判員のインターフェア(妨害)が適用され、その時点でボールデッドとなるんです。

キャッチャーの送球動作を球審が妨害したら

審判員の妨害は、キャッチャーが送球する際にも起こるケースがあります。
一番分かりやすいのは、盗塁を阻止しようと送球した際に、後ろにいる球審と接触した場合。送球する際にキャッチャーが腕を引くことで、後ろにいる球審の体やマスクに接触してしまうことがあるんです。
これによって、送球ができなかった場合や悪送球になった場合、ランダウンプレーが起きた場合にはボールデッドとなり、それぞれのランナーは元の塁に戻されます。

ただし、ランナーをアウトにした場合には、妨害はなかったものとしてそのまま試合が進められます。
盗塁を阻止しようと送球した場合に限らず、塁上のランナーをアウトにするための送球、ピッチャーへの返球も「キャッチャーの送球動作」に含まれ、妨害の対象となります。

投球が球審のマスクに挟まったら

あまり多いケースではありませんが、ピッチャーの投球が球審のマスクに挟まってしまうことがあります。こうした場合は、どのような処置となるのでしょうか。

投球が球審のマスクや用具、身体などに挟まって止まった場合には、塁上にいるランナーに1個の進塁が与えられます。球審に限らず、キャッチャーのマスクや用具に挟まってしまった場合も同様です。
まずは、投球が上記のような例で挟まって止まってしまった場合=各ランナーは進むということを押さえておきましょう。

また、投球が「第3ストライクを宣告された投球」や「フォアボール目の投球」であった場合、それが上記のような例で挟まって止まってしまうと、バッターにも1塁が与えられます。
「第3ストライクを宣告された投球」で1塁が与えられるのは、キャッチャーが正規に捕球できていない=振り逃げが成立するからと考えると分かりやすいと思います。

ここで押さえておきたいのが、ノーアウトまたは1アウトで1塁にランナーがいるような振り逃げができないケース。
こうした振り逃げが認められない状況の場合には、仮に投球が挟まって止まってしまったとしてもバッターはアウトとなります。

振り逃げについて詳しくはこちら!

審判がボールを受け取ったら?

プロ野球などで、3アウト後にキャッチャーが球審へボールを渡すシーンを見たことがある方もいるかもしれません。
これが、まだ3アウトではない状況=キャッチャーの勘違いで、なおかつ球審がボールを受け取ってしまった場合はどうなるでしょうか。

3アウトと勘違いした野手が審判員へボールを渡す→審判員がそのボールを受け取ってしまった場合は、審判員が受け取るのと同時にボールデッドとなります。
その後、「ボールを受け取っていなかったらどうなっていたか」を審判員が判断・処置する形となります。

2人の審判が異なる判定をしたら

これも頻繁に起こることではありませんが、一つのプレーに対して2人以上の審判員が判定を下してしまう(ダブルコール/ダブルジャッジ)ことがあります。

ホームから1・3塁間の「フェア」「ファール」は球審、ベースを越えたりベースに当たったりした場合の「フェア」「ファール」は塁審、内野フライの「キャッチ」「ノーキャッチ」は原則として球審といったように、それぞれの打球に対して責任範囲が決められています。
しかし、それでも状況によっては2人以上の審判が判定を出してしまうケースがあるんです。

判定が一致していればそこまで問題にはなりませんが、例えば1塁上のプレーに対して、球審が「アウト」の判定、1塁塁審が「セーフ」の判定を出してしまうようなことがあると問題になってしまいます。
ここからは、プロ野球で実際にあった2つのケースをご紹介しながら、対処についてご紹介していきます。

<ケース1>

1アウト1塁。バッターがライト前へヒット。1塁ランナーは3塁へ向かい、ライトは3塁へ送球。それをショートがカットし、1塁へ転送。オーバーランしていた打者走者に対し、球審は「アウト」、1塁塁審は「セーフ」の判定。4人の審判で協議し、「セーフ」の判定。

これは、先ほどご紹介したフォーメーションとカバーリングによって起こったダブルジャッジとも言えます。
明らかなライト前へのヒットだったため、1塁塁審はその場にとどまっていたような形でした。

しかし、打球を目で追いかけるため、一度外へ向いたような格好になっていたんですよね。
1塁が空いた場合のカバーリングは球審が行うため、この時の1塁塁審の動きを見て「外に出た」と判断し、カバーリングに走ったと考えられます。

しかし、1塁塁審はその場にとどまっていたため、1塁で起きたプレーに対して「セーフ」の判定を下しています。しかし、カバーリングでやってきた球審も「アウト」の判定を下してしまい、異なるジャッジとなってしまいました。

これを防ぐために、カバーリングする審判に対して「カバーしなくていいよ」と手で押さえるような動きを見せることもあります。
また、打球を追いかける際に「Go out(打球を追うよ)」と声を出して他の審判に伝えたり、手を上げて自分が打球を追うことを伝えたりすることもあります。

<ケース2>

1アウト3塁。バッターがファーストライナーを放ち、それをダイビングキャッチ。
これに対して、1塁塁審は「ノーキャッチ(セーフ)」の判定、球審は「キャッチ(アウト)」の判定。守備側は「キャッチ」と判断し、3塁へ転送。飛び出していた3塁ランナーがアウトの判定。
攻撃側は、1塁塁審が「ノーキャッチ」と判定したことを抗議。4人の審判で協議し、「キャッチ(アウト)」の判定。

内野へライナーが放たれた場合の判定については、最もよく見える位置にいる審判員が「キャッチ」「ノーキャッチ」の判定をすることが原則となっています。

<ケース2>は、確かに1塁塁審が最も近くにいたことは間違いありませんが、1・2塁間のライナーをファーストがダイビングキャッチしたため、見えにくい位置であったと考えられます。
このような判定には「オープン・グラブ・ポリシー」というものがあって、グローブのお腹側にいる審判員が判定することが原則となっているんですよね。

しかし、ランナー3塁だったため、2塁塁審はレフト側の外野に位置しており、打球からは遠い状況でした。
そのため、球審がファーストの方向へ駆け寄りながら「キャッチ」の判定を出す形となっています。

<ケース1><ケース2>のような場合は、球審が審判員を集めて協議し、どの審判員が最も適した位置で見ていたか、どの審判の判定が正しいかなどを考慮して、どの判定を取るかを決定します。
<ケース2>では、責任審判から「球審と塁審で異なる判定が出た。規則により、一番正しい位置で見た審判の判定を採用し、打者はフライアウト、3塁走者はアウトで試合を再開」という説明が場内になされています。
つまり、最終的な判定を出した審判員が最も適切な位置で見て、最も適切な判定をしたと考えることができます。

さいごに

今回は、審判に関する概要、審判に関わるルールなどを中心にご紹介しました。

審判員の視点から野球を見つめることは、選手や指導者にとっても役立つことがあるかもしれません。審判をやってみることで、見えてくる世界もあると思います。

野球の試合で審判員に注目する機会はあまり多くないかもしれませんが、審判員の動きに注目してみることで、その面白さや奥深さに気づくことができると思います。

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