野球の審判のやり方は?これだけは押さえておきたい球審の基本

審判

「このなかに、野球の審判はいらっしゃいませんか?」

飛行機内でのドクターコールのような展開はないと思いますが、突然審判をお願いされるケースがあるかもしれません。

例えば、子どもが学童・中学等で野球をやっていると、練習試合の際に保護者の方が球審や塁審をお願いされるケースがあります。
また、自らが野球部や野球チームに所属している場合も、同様に審判を頼まれることがあるかもしれません。

審判=塁審をお願いされることが多いかもしれませんが、「球審をやってほしい」と言われてしまい、「どうしよう…」なんて慌ててしまう可能性もあります。

ちなみに、球審のことを主審と表現する人も多いですが、野球において「主審」と呼ばれる審判員は存在しません。こちらについては、以下の記事で詳しく説明しています。

球審はストライク/ボールの投球判定があるため、1試合における判定回数は塁審よりも多くなります。ピッチャーの投球に限らず、様々な判定を行うことはもちろん、試合の進行においても様々な役割を担わなければなりません。

今回は、球審をお願いされた時に困らないようにするための「基本的なやり方」にスポットを当てていきたいと思います。

判定に関わるもののほか、試合の進行において知っておくと便利な情報についても簡単にご紹介できればと思いますので、ぜひチェックしてみてください。

野球審判のやり方①:球審の試合前準備~プレイボールまで

冒頭でもご紹介したように、球審と聞いて思い浮かべるのは、ストライクやボールの判定シーンだと思います。

球審=投球の判定が1試合のなかで最も多いことはその通りですが、1試合を通じてやること、やらなければならないことはたくさんあるんです。

全てをご紹介することは難しいため、ここでは練習試合をイメージしながら、1試合の流れに沿って最低限押さえておきたい事項をまとめていきます。(※公式戦とは異なる部分が多くありますので、あくまでも練習試合におけるポイントと考えて頂ければと思います)

試合前の準備~必須の用具

球審を務める際には、用具の準備をしなければなりません。
キャッチャーと同様に、ファウルチップなどがぶつかりやすい場所に位置するため、マスクやプロテクター(インサイド/アウトサイド)は必須となります。

また、レッグガード(レガース)やファウルカップ、球審用の靴についても、できる限り装着することで、怪我を未然に防止することができます。
マスクやプロテクターなどは硬式用や軟式用に分かれているものもあるため、それぞれの試合に合わせたものを使用するようにしましょう。

また、ストライクやボール、アウトカウントなどを手元で確認できる「インジケーター」を準備することも大切です。
三振アウトやフォアボールになるケースはもちろん、例えば振り逃げインフィールドフライなど、アウトカウントによって適用が変わってくるプレイもあります。
何かの拍子にカウントを忘れてしまったり、カウントを間違えてしまうことを防ぐためにも、試合中に手元で常にカウントしておくことが重要です。

試合前の準備~あると便利な用具

このほか、ハケ(ブラシ)を準備して、ホームベースを常にきれいにすることも大切なポイントの一つ。

ホームベースは、ストライク/ボール、ホーム上のプレーにおけるアウト/セーフの判定の際にも重要な役割を果たします。ベースが土で隠れていると、判定に支障をきたすことがあります。

また、ボール袋は上着やズボンのポケットでも代用できないことはないですが、収納できるボールの数に限りがあり、試合中にポケットからボールが落ちてしまって、プレイに影響を及ぼす可能性があるかもしれません。

ボール袋は4~5球程度をまとめて収納できるため、新しい球と交換する際にスムーズな取り出しができるほか、ボールパーソン(ボールボーイ・ボールガール)に補充してもらう回数も少なくすることができます。

ボール袋はベルトに通して使用するため、服装によっては別途ベルトを準備しなければならないことも押さえておきましょう。
また、ボール袋には、ハケを収納するポケットもついていることが多いため、セットで準備しておくといいでしょう。

なお、審判もメンバー表の控えを持つ場合には、ゴルフのスコア記入に使用されるようなクリップペンシルを持っておくと便利です。
選手や守備位置変更の際には、入れ替わりが多いことがあります。メモできるペンを持っておくと、スムーズに対応することができます。

試合前の準備~メンバー表交換と先攻・後攻決めのトス

試合前には、両チームのメンバー表交換を行い、トス(じゃんけん)によって先攻・後攻を決めます。
公式戦では前の試合の5回終了後や試合開始予定の1時間前など、比較的余裕をもって行われることが多いですが、練習試合などでは試合開始予定の10~15分前に行うことが多い印象でもあります。

時間になったら各チームのキャプテン等を集めて、球審が立ち会う形でメンバー表の交換やトスを行うのが一般的です。「1・2・3」や「最初はグー」などの方法でじゃんけんを行い、勝ったチームに先攻・後攻を選んでもらいます。

グラウンドルールをはじめ、事前に伝えておくべき事項や注意すべき事項がある場合には、この場で併せて伝えるようにしましょう。そのために、審判員が事前にグラウンドルール等を把握しておくことも重要です。

試合開始時の整列

時間になったら両チームに整列するように呼びかけ、審判員も準備を行います。審判員は以下のような並び方であることも押さえておきましょう。

(↑バックスクリーン方向)

【3塁塁審】【2塁塁審】【球審】【1塁塁審】

(↓バックネット方向)

球審の「集合!」「さぁ行こう!」などのかけ声を合図に、両チームおよび審判員がホーム付近へ整列します。
審判員はキャッチャースボックス後方のラインに沿って横方向に並び、各チームはバッタースボックスの外側のラインに沿って、後方のラインを起点に縦方向に整列します。
球審はホームベースの中心に合わせて立つこともありますが、2塁塁審との間にホームベースの中心が来るようにすると、4人の審判のバランスが良くなります。

特に学童の試合などで多いですが、列が曲がっている場合には声をかけながら修正してあげましょう。
きれいに整列したら、球審は両チームのキャプテンに握手を促します。そして、必要に応じて一言二言話すことが多いです。(握手をしない場合や、握手前に話す場合もあります)

話す内容は特に決まっているわけではありませんが、試合を始めることを伝える言葉、試合をスムーズに行うための声がけ、選手の健康や体調に配慮した声がけなどを添えることが多いように思います。

「『チーム名』と『チーム名』の試合をはじめます」

「攻守交替は駆け足で、元気よくいきましょう」

「暑いので、水分補給をしっかりしてください」

「春先なので怪我をしないように気をつけましょう」

なお、攻守交替(イニングの表と裏が変わるシーン)の際にも「さぁ、行くぞ!」などの声をかけてあげながら、選手たちを盛り立てる審判員の方は多いです。

整列時の声がけ後、球審は両チームが礼をするために「はじめます!」「礼!」といった号令をかけます。
こちらも特に決まりはありませんが、「はじめます!」は、少しだけ挨拶のタイミングがズレる傾向にあるような気がします。
学校での号令に慣れているせいか、子どもたちに対しては「礼!」と短く元気よく発することで、両チームが挨拶しやすい印象でもあります。

試合終了時の整列も両チームが礼をする際に「ゲーム!」「礼!」などの声を発して、両チームが挨拶を行います。(手を上げながら言う場合もあります)

プレイボールまで

挨拶が終わったら、守備側の選手が各ポジションに散らばっていきます。球審はボールを用意し、ピッチャーまたはキャッチャーに渡してあげましょう。

準備投球(投球練習)数や準備投球(投球練習)時間については、リーグごとに制限されている場合があります。事前に連盟などの準備投球の規則を確認し、規定された範囲内で準備投球を行ってもらいましょう。

準備投球が残り1球になったら「One more pitch/ワン・モア・ピッチ(=残り1球 )」や「ラストボール」などと全体に伝えます。最後の1球は盗塁を想定してキャッチャーがセカンドに送球するケースが多いです。

その際にホームベースが土で汚れる(あるいはすでに汚れている)ケースもあるため、ハケを使ってホームベースをきれいにしてから試合をはじめてください。

冒頭でもご紹介したように、ホームベースは投球判定や得点に絡む判定で重要な役割を果たします。常にきれいな状態を保つように心がけながら、万全の状態で判定ができるようにしましょう。

プレイボール以降

守備側の選手がポジション(定位置)につき、バッターが打撃姿勢を取ったら試合を開始します。

なお、試合をはじめる際やイニングのはじめには、後方を含めたファウル地域も見渡すように意識するといいと思います。例えば、ボールが落ちていたり、球場の扉が開いていたりといったことがあるかもしれません。

また、コーチャーズボックスにコーチャーがいない、ネクストバッターズサークルにバッターがいないといったことも考えられます。球場全体を見渡して、異常がないか確認→必要に応じて声がけや対処等をしてから試合をはじめるようにしましょう。

なお、試合をはじめる時は「プレイボール」ではなく、ピッチャーを指さしながら大きな声で「プレイ」と宣告しましょう。以後も、イニングのはじめやボールデッドから試合を再開する際などには「プレイ」と宣告します。

野球審判のやり方②:球審をする上で押さえておきたいポイント

球審の位置取り

アマチュア野球では「スロットポジション」という位置取りが基本となります。
スロット=「何かと何かの間」という意味があるように、スロットポジションはバッターとキャッチャーの間に位置するポジションです。つまり、右バッターと左バッターでは立ち位置が異なります。

スロットポジションをとることのメリットは、ストライクゾーンの高低および内外を見やすい点。
キャッチャーに視界をさえぎられることがないため、ベース全体が見やすくなります。
また、学童野球ではありがち&分かりづらい「バッターの足に打球が当たったかどうか」なども比較的見やすくなると思います。ちなみにファウルチップが当たりづらいというメリットもあります。

スロットポジションは、アウトコースが自分から遠くなるため、はじめは判定が難しいと感じるかもしれません。こちらは、投球判定を重ねながら慣れていきましょう。
また、キャッチャーがインコースに構えた時などは、バッターとの間に構えることが難しく(ホームベースが見えなく)なるかもしれません。
その場合には、無理に両者の間から見ようとせずに、もう一つの位置取りである「センターポジション(=ホームベースの真後ろに位置する方法)」も活用してみてください。

球審の足の置き方

足の置き方については「スロットスタンス」が基本となります。

まずは、「スロットポジション」と「キャッチャーのかかとのライン」を意識して、そこに球審のバッター側の足のつま先(右バッター→右足、左バッター→左足)を合わせます。つま先はピッチャーにまっすぐ向けるようにしましょう。

この足のかかとのラインを意識しながら、もう一方の足のつま先を外側に45度ほど開きながら合わせます。両足の幅は、肩幅より広めにとりましょう。肩幅より狭いと安定性に欠けてしまいます。また、開きすぎると体への負担が大きくなるため、自分が楽な広さということを意識してください。

「スロットスタンス」でキャッチャーとの適度な距離感を保ちつつ、キャッチャーが返球したり、送球したりする際にぶつからないように注意しましょう。

球審の構え方

ピッチャーが投球を開始したら、エレベーターが降りるようなイメージで姿勢を低くして、投球判定を行う体勢をとります。

この時、自分のあごをキャッチャーの頭に乗せるぐらいの高さでストップしましょう。
頭の位置が高すぎたり低すぎたりすると、判定が難しくなったり、視界が遮られてしまいます。

手の位置については、バッター側(右バッターの場合は左手、左バッターの場合は右手)の手を直角に曲げて、手をグーにしながらベルトのバックルの上あたりに置きます。
反対側の手は、ひざの上をつかむようなイメージで軽く固定しましょう。これが基本的な構え方となります。

ピッチャーが投げてからキャッチャーミットに収まるまでは、顔を動かさずに目だけでボールを追います。
これは「トラッキング」と呼ばれるものですが、はじめはどうしても顔を動かしながらボールを追いかけてしまうはず。
この技術を自分のものにするためには実践あるのみですが、これができるようになるとストライクゾーンがより安定します。

ストライクゾーンとコール

冒頭でもご紹介した通り、球審はストライク/ボールの投球判定を多く行うことになります。ストライクゾーンについては、以下の記事で解説しています。

ストライクゾーンを知ったとしても、それを1試合のなかで一貫して厳密に適用することは決して簡単ではありません。

また、ストライクゾーンに限った話ではありませんが、ルールブックを読むだけでは「分かったつもり」であることが多いです。ストライクゾーンについても、実戦で多くの投球に触れながら自分のものにしていくことが求められます。

なお、規則上はストライクでもボールになったり、その逆になったりすることがあります。

学童野球などでは投球が山なりであることも多いため、バッターの肩口から入ってくる投球がストライクになることもあります。
基本的なストライクゾーンを確認したうえで、それぞれに合わせたストライクゾーンがあることも押さえておきましょう。

ストライクに「打て」という意味があるように、打てる球かどうかを考えることによって、ストライクゾーン(特にきわどいコースの判定)が考えやすくなることもあります。
また、「楽しく野球をするために」という原点に立ち返ると見えてくるものもあります。

投球判定がストライクの場合には、立ち上がりながら握手をするように右手を上げていきます。
肘が90度になるように意識しながら、手をグーにしてドアをノックするようなイメージでストライクのジェスチャーを行いましょう。
コールについては「ストライク」または「ストライク・ワン(ツー、スリー)」のいずれかとなります。

なお、ボールの場合には姿勢の低い状態を固定したまま(構えたまま)、「ボール」または「ボール・ワン(ツー、スリー、フォア)」とコールします。

さいごに

今回は、野球の球審のやり方について、基本的な事項を中心にご紹介しました。今回取り上げた内容は、最低限押さえておきたい事項や役に立つと思われる事項から、さらに厳選したものとなります。

このほかにもフェア/ファウル、アウト/セーフの判定をはじめ、球審が担う役割がたくさんあります。
ただ、全てをご紹介すると膨大な量になってしまいますし、それらを全て頭に入れることも簡単ではありません。

ルールブックやマニュアルなどを読んでも、実際の試合では「これはどうなの?」というケースが出てきたり、基本を押さえた上での応用が必要な場合もあります。

審判のやり方を学ぶ方法はたくさんあると思いますが、そのなかで大切にしてほしいのは「模倣」です。
現場で実際に審判員の動きやコール、ジェスチャーなどを見て、その意味を考えながら真似をしていくと、審判員というものがより見えてくると思います。

また、審判員の方にお話を聞く機会があれば、そうした時間もすごく有意義だと思います。
プレーと同じで、審判についても失敗から学ぶことがたくさんあります。何度経験しても100点満点にはならず、何かしらの反省点が出てくるはずです。

はじめから全てを完璧にしようと考えず、少しでも100点に近づけてられるように経験を積んでいくことを意識してみてください。

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